脱『おもんない』宣言 安くてしょぼくてもいい 面白いものを作れ

2009.04.19  

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UNBORING MANIFESTO

 脱『おもんない』宣言。

 そんな訳を思いついたら、とたんにわかりやすくなった。

WHAT'S UNBORING

 そもそも「退屈」とは何なのか。以前は、どれだけ美しい家を欲しいと思っていても、たいていの人には、それを手にするだけの余裕がなかった。これじゃあ「退屈」だ。昔から、多くのものが多くの資金を投じて作られている。けど、より限られた資源で作ることとなると、あまり考えられてこなかった。
 過去の一部のデザイナーがある不平等を生んだ。彼らはローコストで、より洗練されたものを作りたかった。理論的には、それは十分にシンプルに見えた。バウハウスのデザイナーもそれを試みた最初の一例だ。しかし彼らの努力は失敗に終わった。彼らは美しい家具をつくったが、それらはまだ多くの人にとってはあまりに高価だった。彼らは何かを見失っていた。でもその理由はわからなかった。
 「買おうとするものの中に醜いものがなくなるまで、美しいものを買うのが醜いものを買うのと同じくらい安くなるまで、すべての人のための美が実現できるだろうか。」-エレン・ケイ

 これ、難しい言葉でいろいろと並べられているけど、ぶっちゃけて意訳するとこんな感じだと思う。

 例えばイームズだったり、イタリアの高級家具だったり、飛騨の匠の家具だったり、世の中に美しい雑貨や家具がいっぱいある。けど、折角そういうのを「美しいなぁ」と思っても、手に入れられなかったら意味無いでしょ? 自分のものとして(自分の生活する環境の一部として)使えなかったら、つまんないでしょ? 面白くないでしょ?

 美術品と違って、家具や雑貨は使うためのものだから、使ってみないと価値は量れない。少なくとも、自分で使うことのできないものを遠くから眺めて「美しいなぁ」と思うためだけのものじゃない。こんなのが使えたらステキだろうなぁと憧れ、そのために努力するのは大切だと思う。けど、良いなぁ、けど無理だなぁと思うのは、いわゆる欲求不満であって、そんな気持のままじゃ幸せにはなれない。そんなマイナスな気分を、この「つまんない」、「おもんない」という単語がものすごく的確に捉えていると思った。

 やっぱりテーブルは無垢の一枚板じゃないとね! でも、買えないんじゃ意味無いし。
 イタリアのソファは座り心地は最高だし長持ちするよ。 でも、買えないから関係ないな。
 カーボン素材とか最新素材を使って椅子作ったらオモロイんじゃない? いや、買える値段にならないからおもんないって。

 「おもろいことをしたい」という経営理念に基づいて突拍子もないアイデアをいろいろ提案したりしても、そのほとんどが的はずれに終わってしまうのは、この「おもんない」という気分に阻まれていた部分が大きいかもしれない。何が良いか悪いか、何が面白いかつまんないか、いくらくらいのものを買うゆとりがあるかは人それぞれ違うけど、自分が相手にしている人たち、製品を提供する人たちが、ちゃんとそれを手に入れて、使って、価値を享受できるように、価格や流通の仕組みがそれぞれの人にマッチさせられているだろうか。
 でなければ、どんな「おもろい」アイデアも、「おもんない」とバッサリ斬り捨てられちゃう。


 この「UNBORING MANIFESTO」と題された小冊子は、2002年頃にIKEAの広告キャンペーンとして展開されたもので、お昼休みに手持ち無沙汰で書庫でほこりを被っていた古い洋雑誌を何となくめくっていたときに発掘されて、目を通したとたんに、その冊子を雑誌から引っぺがして机の引き出しに保管されたもの。
 IKEAのキャンペーンだから、最終的にこれは「だからデザインの優れたものを、徹底的にコストダウンして大量生産して、より多くの人の『つまんない』をなくしたい」という風に結ばれていくし、それは個人的にもすごく共感するところだけど、でもこれは決して低価格の量産品だけに求められる姿勢ではなく、一部の人のための高級品にも通ずると思う。

 それは、誰のための、どんな「幸せ」のためのものなのか。

 それを無視した製品は「つまんない」の一言でバッサリと斬り捨ててしまってかまわない。

 そんな考え方を教わった。

[参考] OLPC - ONE LAPTOP PER CHILD
 すべての子供に、1台のノートパソコンを。  「100ドルPCプロジェクト」みたいに言われることもあるけど、途上国の子供たちの教育のために低コストでPCを製造して配布できるようにしようというプロジェクト。製品のコストダウンは企業の利益を生むためだけのものじゃない、という好例だと思う。ものはすでに溢れていると言われて久しいけど、ものが溢れているのはまだまだ世界の一部。それ以外の人は「つまんない」から抜け出せずにいる。より多くの人の幸せのために、しなければならいことはまだまだ沢山ある。と思う。

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