大人になったら「友達」を作る方法や目的が変わるのかな

2006.01.09  

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角田光代 『対岸の彼女』

 以前「じゃマール」などの個人広告に『親友募集』という広告を載せるのが流行っていました.親友って,そんな募集してつくるようなものじゃないだろうって,変な話だと思っていたし,実際マスコミでもそんなことが取り沙汰されていたのを思い出しました.
 じゃあ「親友」って何だろう.どうやってつくるものなんだろう.当時はそれ以上知りようもなかったけど,今になって思い当たるのは,吉野朔実さんの言う「相思相愛でありながら抵抗によって達成できない擬似恋愛関係」という友情の定義です.

 人は生まれてから死ぬまで絶対的に「孤独」です.人の心は自分でも量り知えないほどに膨大で,そのすべてを他者に伝えるには,あまりにも人の持ち得るコミュニケーション手段は未熟だからです.けど,そういった足枷に屈することなく,不断の努力によって築き上げられる「人と人との関係」のうち最も深く強固なものが「恋愛」(と呼ぶにふさわしいもの)です.
 「友情」もそこから幾分か欠落する要素はあるものの,心の働きは「恋愛」のそれと何も変わりません.心から信頼できる人,心から好きになれる人と出会い,お互いを理解し合い尊重し合い,幸せや喜びを共有し,辛さや哀しみを癒し合う,そんな関係.
 もちろん時に衝突もあります.けど,人は誰しも完璧ではないのだから,それは当然起こりうることであり,問題の本質は自分の思うその人と現実のその人との間に生じたギャップであり,そのギャップをさらなるコミュニケーションによって埋められるか否かです.もし本当に人と人との関係が終わりを迎えることがあるとすれば,それは関係を修復する努力に見合う「その人の魅力」が見出せないことに起因するのではないでしょうか.

 この人は,自分と違う立場の人間がいるってことを本当にわからないんだな.小夜子はさらりと思う.みんな違う,違うから出会いに意味があると,大上段に構えて言っていたくせに.(P.209)
 こわかったのだ.同じものを見ていたはずの相手が,違う場所にいると知ることが.それぞれ高校を出,別の場所にいき,まったく異なるものを見て,変わってしまったであろう相手に連絡をとることがこわかった--友達,まだできないの? と訊かれるのがこわかった--.(P.275)

 「おとなになったら友達をつくるのはとたんに難しくなる」という角田光代さん.けど,おとなになったからこそ,いろんな知識や経験を積んできたからこそ,それを築き上げ持続させることができるのかもしれません.立場が違っても,それを理解し合いうまく付き合い続ける方法はあったはず.裏切りや失望すらも,単なる自分の妄想からくる期待を消し去り,現実のその人を捉えなおしたり悪いところをお互い改善していくこともできたはず.
 人は人と関わることで成長することができます.良い人と良い関係を築くこと.それこそが自分を良い人間へと成長させる最良の手段ではないでしょうか.

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