ALWAYS 三丁目の夕日 (2005年日本) 山崎貴 監督 / 吉岡秀隆 堤真一 |
昭和33年の東京夕日町.建設中の東京タワーが背景にそびえつつあるその町に,大企業の社長秘書という妄想を胸にうっかり商店街の自動車修理工場へ青森から集団就職してきた少女と家族,その向かいの駄菓子屋で売れない小説を書く作家と酔った勢いで引き取ってしまった子供を主軸に,悪人なんて微塵にもいない,家族もお隣さんも縁もゆかりもない赤の他人もみんな仲良く信頼しあって,底抜けにハッピーな毎日を過ごすという,かつての日本に実在した(ような気がする)理想郷での一幕を描いた傑作.
なんかもーね.こういう幸せいっぱいの映画にケチをつけることなんて,僕にはもうできなくなりました.全身全霊をもって真剣に立ち向かうからこそ,世界はそれに応えてくれる.この先ずっとうだつの上がらない人生でもあなたがいてくれれば僕は他に何も要らない!という姿勢.なんていうか,人生は思っていたよりもずっと単純なのかもしれない.
もしかしたらそれが,いわゆる「お前も歳食ったな」ていうことなのかもしれないけど,だったら僕は喜んで歳食おうと思う.
実家から「追い出された」と思い込み,盆も正月も帰ることを頑なに拒むロクちゃん.けどそこで会うことを止めてしまったら溝は決して埋められない.例えホントに追い出されてたとしても,1年の間に心境が変わった可能性を確かめることができない.「子の顔が見たくない親なんていない」というのは真理だと信じたいけど,本気でそう思うに至る親だったとしたらロクちゃんみたいな心優しいこは生まれない.
自称「あばずれ」で結婚の夢を「冗談よ」と茶化すヒロミさんに勇気を振り絞ってプロポーズする龍之介.そこで彼に必要なのは,茶化されようが誤魔化されようが断られようが,なりふり構わず真剣に想いを伝えることだけ.それができないのは,要するに自分の気持ちがそれだけ中途半端な証でしょ.そんなんで相手がなびくわけ無いでしょ.
どちらのケースも,大事なのは,想う相手を「信頼すること」に尽きるんじゃないかと思う.親子は先天的にそれが許される最も貴重な存在で(親子が信頼できないとしたら後天的にそれが破壊されているから),逆にその他の関係は,双方の不断の努力によって後天的に築き上げていくからこそ,それは貴重で美しいものとして映る.
現代社会に唯一ケチをつけるとしたら,そうした後天的に築き上げていく,後に城のように大きく宝石のように美しくなる「信頼」の小さなきっかけを,無駄に大きく多量なメディア情報によって片っ端から壊してることかも.僕もずいぶん無駄に多くの不幸を見てきた気がするけど,もうそろそろ「飽きた」宣言をしても良いお年頃なのかもしれないな.
2005年の日本アカデミー賞を総なめにしたことで話題になった作品でもあります.
20歳以上の全ての日本人におススメ,ていうか,一度この映画で自分の幸せ度をチェックしてみるべきかと思います.
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