キャビネット作りの要「フラッシュ材」について一言

2006.06.26  

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化粧板貼り付けとプレス

 今年の「収納基礎制作」は,デザインから自由にやらせると,(難しい構造を避けたりして)勉強にならないとか一貫した指導ができないとか間に合わないとか,何かと理由があってのことだと思うけど,結局「全員が指定された図面の通りに作る」という技術オンリーの何とも味気ない課題になってしまいました.「全員が同じものをつくる」ので,必然的に「作業を分担して全員分をまとめて作る」という量産工場みたいな雰囲気だし.
 見方を変えれば確かに,卒業して現場に出れば否応なく同じものを大量にせわしなく作り続けることになるわけで,14台分の部材を速く正確に作り続ける最近の仕事(そう,勉強じゃなくてこれは紛れもなく「仕事」)は,いわゆる職場体験的なものとしてはアリなのかなぁと思わなくもないけど.ここが「自分のデザインを自分で作る学校」であることを忘れそうな今日この頃.

 さてその収納製作の要となるのが,写真でも作ってる「フラッシュ構造材」というヤツです.一般的にフラッシュと言えば,梯子形に組んだ心材の両面に化粧合板を貼った中空の板のこと.今回作っているのもまさにそれ.心材を組んで,合板をプレスして,木口に短冊状の無垢材を貼って,それを組んで収納箱を構成していきます.

 その一番のメリットが「コストダウン」であるためか,そういう意識でフラッシュを多用してきた応報か,どうしても「フラッシュ=安物」というイメージがあって,いやフラッシュは決して無垢の偽物ではなく無垢にはないメリットがあってだからあえてフラッシュを使うんだ! 彼は悪くないんだ良いヤツなんだ! という声を良く聞きます.授業でも聞きました.みずき工房のコラムにもありました(ていうかちょうど昨日これを読んで,この記事をしたためています).

イタリアのフラッシュ家具 けど,それすらもちょっと違うと思ったんですよね.ホントに「フラッシュ=安物」なんでしょうか? 目を国外に向けてください.誰もが認めるイタリアの高級モダン家具.これらってほとんど全部フラッシュじゃないですか? それなのに,彼らはフラッシュ材のメリットを主張していません.顧客はフラッシュであることに何の疑問も持たずにそれを選びます.誰も「これは無垢じゃないからダメだ」とか「フラッシュなんて安物を使いやがって」なんて言いません.

 そこがまさに,イタリアデザインのレベルの高さなんだと思う.他の素材と比較しての優劣ではなく,その素材が秘める可能性,美しさ,機能などを無理なく最大限に引き出してやる.そしてその結果としての製品に,見ただけでそれがわかる当たり前の機能性と文句のない美しさを纏わせる.そしてそれが携わった時点で,素材にまで言及した細かなコンセプト等はもはや無用の長物でしか無くなってしまいます.

 そう,結局目指すべきなのはそこしかないんですよ.フラッシュは無垢板の代用品じゃない.無垢材と性質や加工性が近いというだけの,金属やガラスと並ぶ,また別の素材です.金属やガラスが使われていてもだれも疑問を挟まないのと同じように,誰にも文句を言わせないフラッシュ素材の使い方を,素材の特性や加工法なども含めて,今後とも勉強していく必要がありそうです.
 素材が増えれば,それだけデザインの幅は広がるはず.今後も積極的に,デザインの幅を広げていこうと思います.

※海外では中空のフラッシュ構造よりも中身の詰まったランバーコアやパーティクルボードコアが主流だそうです(中空フラッシュは日本だけって言われているけど,海外にもちゃんとありますよ).見た目には一緒なので,用途とか機能で使い分ければ良いんじゃないかと思う.これも一長一短.

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