卒業制作にて「RD貼突板合板」なんてものを奮発してみました

2007.01.13  

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突板合板
ウォルナットとナラの突板合板(厚さ4mm)

 「突板(つきいた)合板」って,ご存じでしょうか?

 うす~くスライスした高級な樹種(この薄くスライスした板のことを突板という)をローコストなベース合板に貼り付けた合板で,「天然木化粧合板」とも言います.ホームセンターに売ってるシナ合板も,製造工程からすれば突板合板の一種ですが,あくまで「シナ合板」と呼ばれ「突板合板」とは区別されます.また,これもホームセンターに売ってる木目のプリントされた塩ビシートを貼った合板も,「プリント合板」と呼ばれる別物です.

 なんでホームセンターに置いてないかというと,まず第一に価格の問題.最も安い樹種でも,シナ合板の倍はします.だから,シナ合板でも高いと思ってしまうホームセンターニーズには適合しません.それと品種の問題.それこそ流通している木の種類と同じくらいの多品種なので,ホームセンターでは抱えきれません.
 ただ,在庫にないというだけで,頼めば取り寄せてくれるところもあるかもしれません.東急ハンズなら意地でも取り寄せてくれそうですが,そんな遠くに足を運ばなくても,近所の建材屋さんに問い合わせてみると,意外と簡単に手にはいるかもしれません.
 本校の学生はほとんど,市内の建材屋さんに頼んで持ってきてもらっています.製造元は岐阜加工ベニア製作所(岐阜県各務原市)です.

突板の最大の欠点 - 繰り返しパターンによる 人工的 機械的な表情

キャビネット扉の柾目パターン
例えばキャビネットの扉に使ったタモ柾目
12cmくらいの繰り返しパターンが見える

 突板は,元になる板を何枚にも薄くスライスして,それを並べてベース合板に貼り付けるため,どうしても元の板の幅で同じ木目模様が繰り返されるパターンが現れます.
 木目の目立たない樹種や,色調の均質な樹種の柾目,または着色して使う場合にはそれらはほとんど気になりません.が,逆に木目が目立つ樹種の板目や,下手すると右端と左端で色が全然違う突板を大きな面積で使ったりすると,その繰り返しパターンが特に際立って見えてしまいます.
 特に近年は幅広の原木(樹齢の高い樹)が世界的に採れなくなっていて,昔は910mm幅の合板を2枚で貼れていたものが今は良くて3枚,普通は4枚になってきて,柾目に至っては幅が十数センチしかなく,特にパターンが顕著に表れます.

 言うまでもなく,木目は自然の作る模様なので,二つと同じものはありません.それなのに,突板合板は極めてよく似た木目模様が延々と並んでる.そこが,折角の自然素材を使いながらも,そこから遙かに遠い人工的,機械的な表情を生んでしまう突板の最大の欠点だと感じていました.

 パターンが目立たない突板も,それはつまり自然が生んだ表情が最初から無いということだから,どうしても無機質感は否めません.ただ,その無機質な表情が,逆に都会的で洗練されたイメージを持つことから,モダンな輸入家具には好んでそういった突板が使用されています.

無垢材を板矧ぎしたような表情の突板

RD貼り突板合板
ホワイトアッシュ板目 RD貼り突板合板 1820×910mm

 そこで,今回の卒業制作にはこの「RD貼り突板合板」を使ってみることにしました.RD貼りとは,突板の幅が一定にならないように裁断して,バラバラに貼った突板合板で,見ての通り,バラバラな幅の無垢板を板矧ぎして作ったような,木目にパターンのない表情をしています.
 今回は,ホームページで気軽に一般からの注文を受けて受けている坂商会(岐阜県安八郡)に製作していただきました.他の製造所や建材屋に依頼する場合は,説明してもわかってもらえないかもしれないので,上の写真をプリントしていくと話が早いと思います.

RD貼り突板合板
RD貼りもバラバラなのは1枚の中限りで
並べて使うと結局1枚単位でパターンになってしまう

 ただ,このRD貼り突板合板の最大の欠点は何と言ってもその価格.この値段になってしまうと,(特に無垢材価格の手ごろなホワイトアッシュでは)無垢で作る場合と価格メリットはほとんどない,というかフラッシュの構造を考えたり,カットやプレスする手間を思えばむしろマイナスなのかもしれません.それでも敢えてフラッシュにチャレンジするのは,やっぱりフラッシュにはそれにしかない強いメリットがあるからだと僕は考えます.
 一般的な話は過去の記事を参照していただくとして,ひとつ追記しておくと,それは「価格の中身」に関すること.例えこの突板で作ったフラッシュ材が無垢板と同じ値段だったとしても,その価格の内訳は,希少性でも輸送コストでもなくて,ほとんどが「人件費」です.つまり,より少ない資源で,より多くの労働を生むことができる.それが,僕が漠然と考えている「これからのものづくり」に求められる姿勢により近いから,あえてそれを選択してみました.もちろんフラッシュ材は無垢に比べて石油をバンバン使っているので簡単には比較できませんが,今のところは量も少ないので,考え方,姿勢の表明の意味合いでしかありません.

 そういう見えないところにも,価値あるものにはきちんとお金を払えるような人になりたいと思います.
 でなきゃ,本当に価値ある家具を作れるようにはならないぞ,という戒めを込めて.

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