すぐそばの他者は自分を映す鏡 日常の一歩外にある現代アート

2009.05.11  

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『インシデンタル・アフェアーズ』 サントリーミュージアム天保山

 人と触れ合いたくて、でも傷つけられるのが怖くて、それでもずっと独りでいるのは耐えられないから、ただ僕がいまここにいることだけでも気付いてほしい、僕のことを見てほしい。そんな浅はかで身勝手な願望を見透かすように投げかけられる鋭い視線からは、しかし、不安でもなく、怒りでもなく、むしろ哀れみ、いや、柔らかい優しさすら感じる。
 「見てるよ。キミは確かにそこにいる。でも、キミはそこを動かない。そこは"外"だ。キミがそこにいるかぎり、ボクには何もできないよ。」
 わかってる。けど、僕には何もできない。近づきたくても、永遠にこの距離は埋められない。結局、ただ逃げることしかできない。わかってる。ただ、それまでの短い間だけでも、僕のことを見ていてくれて、ありがとう。


 横溝静の「Stranger」シリーズは、横溝が「○月○日○時に写真を撮るので、部屋の中から窓のほうを見ていてください」という手紙を見知らぬ他人の家に投函し、協力を得た人の姿を納めた写真たち。写真を撮るのに会話も交わさなければ、最初から最後までその人がどこの誰かも全くわからない。カメラは窓の外にセットされているがそこにアーティストの姿はない。

映画『クローサー』

 僕の好きな映画「クローサー」の劇中ににも、同じ「Strangers」と題された写真展があったのを思い出した。いい比較になるんじゃないかと思って。おそらく大抵のポートレート(肖像画、人物画)は、被写体の方に物語が多く含まれていて、鑑賞者はそれを読み取り、解釈するという関係性になっている。そこには被写体とアーティストの関係っていう物語も含まれている。言葉は悪いけど、それはいわゆるデバガメ的なエンターテイメントであって、自分という主体はあくまで傍観者だ。
 けど、横溝の作品はそれを根底から覆す。アーティストは被写体と関係もなければ元より興味すらない。アーティストは被写体を見ていない。被写体もアーティストを見ていない。レンズを通し、被写体を見ているのはダイレクトに自分だ。被写体の視線はその自分の視線に導かれ、交錯する。そして、そこに無言の対話が始まる。もはや被写体の物語を盗み見る余裕はない。何かを読もうとする自分の視線は真っ直ぐ自分に跳ね返ってくる。そう、読み取っているのは自分の物語。窓を隔て、会話も、心も通わせない、永遠の他人と向き合い続ける自分の物語

 今日も良い作品に出会えた。ありがとう。


 最近は中近代の洋画や日本画を観に行くことが多かったので、久しぶりの現代アートの展覧会だったけど、思ったよりもずっと気兼ねなく、親しみやすく、自分に近い世界の作品として楽しめたのは、そういう趣旨の展覧会だったから? いや、以前だったら自分もこういう作品を、小難しい顔して見てたのかもしれないなぁ、と思う。
 田中功起のインスタレーションで、ちりとりがぱたんと倒れたり、車止めにいきなりバケツをかぶせてみたり、脚立がそーっとベッドに寝かされたり、時計の針を突然キュッと進めてみたり、そんな日常をちょっと逸脱した映像が面白くてしかたなかったんだけど、ふと周りの人の顔見てみたら、なんかみんな小難しい顔してんの。笑顔だったの外国人のおじさんだけだった。

 みんなもっと気軽に、心を空っぽにして、現代アートを楽しもうぜ!


IKEA CAFE/アーモンドケーキ 250円

 帰りにIKEAでお茶。なみはや大橋越えは気持いい!を通り越してちょっとキモを冷やした・・・。
 家具は安いけど、カフェメニューはそれほどお得感がないのが微妙に納得いかないIKEA。けどソフトクリームは50円だし、ドリンクは200円なのにホットドックセットは150円だし。要は「バランスがおかしい」ってことか。家具も一緒で。きっと価格マーケティングとか全然してないんだろうな。

 なんかIKEAばっかり紹介してるけど、なんだかなんだ言って好きなんだと思う。このカラフルでハッピーなインテリアたちが。いわゆる高級家具店のスましたインテリアはどうもリアリティを感じない。散らかってるのになんかオシャレっていう部屋が理想的。
 結局僕はごちゃごちゃした混沌でしか生まれない、躍動感溢れるカラフルでハッピーな世界が好きなんだー!という話は、実は次回予告。乞う御期待。

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