『広告コピーはこう書くんだ!読本』でデザイナーの基礎追試

2008.03.22  

このエントリーをはてなブックマークに追加  

谷山雅計 『広告コピーってこう書くんだ!読本』 広告コピーってこう書くんだ!読本
谷山雅計
 上から言われたものを言われたままに作るのはデザイナーの仕事じゃない。写真選びやレイアウトの小手先だけ変えたプランを意図もなく作り「選んでくれ」なんてプレゼンはあり得ない。世の中に「意図」がなく作られるものはない。望まれないなら産まない方がいい。どんな障壁、理由、口実があったとしても、最終作品にそれを載せられる訳はなく、ただ作品の完成度だけで評価される。そしてその作ったものに対する全責任は、作ったデザイナーが負っている。出来が悪ければ職を失うし、もっと悪ければクライアントも道連れにすることを忘れるな。

 少々キツい言葉だけど、それに込められた感情は、むしろ情愛に近いものだったと思う。これは、うちに出入りしている、ベテランプランニングコンサルさんから最近頂いた言葉。
 最近の仕事は、ただひたすら文字校正をしたり広報したり経営の勉強をしたりデザイナーや職人探してもの作らせたり、それでいてノウハウは蓄積されず失敗作ばかり山積して、自分はいったい何をしているのか、自分がいったい何をしたかったのか、何になりたいのか見失っていたところ、プロダクトかグラフィックかの誤差はあれど、不意に「デザイナー扱い」されたのが妙に嬉しかった。


 そんなコンサルさんの厳しい言葉を、とてもやさしくわかりやすく語りかけてくれるのがこの2冊だ。

 コピーライターとデザイナーはよく似ている。コピーライターとデザイナーは広告業界における実働部隊で、それぞれ「ことば」と「ビジュアル」を作り上げるプロフェッショナルだ。伝えるべき、もやもやと存在している「何か」を具体的な「ことば」や「ビジュアル」として構築していく、その元となる思考プロセスはほぼ同じ。同じだけど、彼らは「ことば」を操るプロだから、その思考プロセスを記したことばは、とても素直でわかりやすい。「広報」なんてのを担当することになったのはたまたまだけど、「コピーライター」という視点で「デザイナー」の視点が大きく広げられたかもしれない。

 「描写」ではなく「解決」でなければいけない。ただ単に美しいものを作ればいいわけじゃない。それは生活の、世界の問題を解決するためのプロダクトだろうか。

 「ふつうの人の意欲」を期待してはいけない。デザインマニアでないひとには、何が良いデザインかすぐにはわからない。だから一目で「なんかいいね」と興味を抱いてくれる、それも確実に抱いてもうらうための「わかりやすさ」が必要だ。

 受け手のよろこび、書き手のよろこび。作り手には作り手にしか味わえないよろこびがある。けどそれは使う人のよろこびとは、ほぼ確実に関係がない。使う人のよろこびに意識が及ばないプロダクトは、世に出ても冷ややかな反応に見舞われる。

 人はコピーでウソをつく。なんとなく世の常識と思われる「一般人」向けや、自分の頭の中の理想郷で使うためのプロダクトは、現実には誰も使わない、ありがたがらないプロダクトになってしまうかもしれない。勝手な思いつきを美化しない。正当化しない。検証は、客観的事実が唯一絶対の手掛かりだ。


 『最新約 コピーバイブル』 最新約 コピーバイブル

 最初に手にとったのはこちらだった。図書館で見つけた。いろんな人がいろんなことを書いている本だけど、ある人の、次のような言葉に引っかかった。

 たとえば、ここに「パルプ・フィクション」という映画がある。見たあなたは「なんかカッコいいよね」「なんかすごいよね」を連発して大満足かもしれない。  けれど、それをつくったタランティーノ監督は、「なんかカッコいいぞ」「なんかすごいぞ」と思いながら撮影したわけではありませんよね。  「ここをこう撮ったら、こうカッコよくなる」という、きっちりした計算と思考のもとに行動しているわけです。  じゃあ、もしタランティーノのような作り手に少しでも近づきたいと思うなら、あなたも同じような"考え方"を実行するしかありません。

 これは「『なんかいいね』禁止。」と題された基礎編に納められた一節。そんな言葉を片隅に残しつつ図書館を後にして、次に向かった旭屋書店でたまたま手に取った先の本に同じ文章が収められていたんだから、それはもう運命の出会い。即行レジに走ったのは言うまでもない。

 この「なんかいいね」禁止。それこそがこのBLOGに駄文を綴り続けている最大にして唯一の動機かもしれない。世の中に「なんかいいね」を連発しているだけのBLOGのなんと多いことか。いいと思ったものを「なんかいいよ!」と叫びたくなる気持ちは良くわかるけど、それだけだったら誰にでもできる。そうではなくて、なぜそれが良いと思ったのか、他の誰かはどう思ったかわからないが、少なくとも自分はこう考える。そんな言葉に、世界で1つの価値が生まれないかと企んでいるのだけど。

 結果論からすれば超マイノリティーの粋を脱せず。

 まずは自分のサイトの広報戦略から考え直さなきゃいけないということか。

SHARE THIS ARTICLE

  • ブログランキング・にほんブログ村へ

RELATIVE ARTICLES

フレッドライクヘルド/究極の質問

フレッドライクヘルド/究極の質問

09.06.20

お客様が大切だって言うけどさ そもそもどう思われてるか知ってるの?

COMMENT AND SHARE

COMMENT

POST A COMMENT

TRACKBACK PINGS

TRACKBACK URL:

http://www.k-en.net/blog3/mt-tb.cgi/4