Jimmy ( photo : Alessandro Paderni ) |
昨年12月にイタリアのウディネ地区で開催されたプロモセディアという国際家具見本市で、コンペティションの招待枠として出品されたチェア「Jimmy」。デザインはイタリアで活動するデザインユニット「DANIELE LUPO & ANGELIKA BURTSCHER」。
僕の記憶が足らなかったら誰か教えて欲しいんだけど、なぜ今までOSB合板のシェルチェアが存在しなかったのか不思議でしょうがない。コロンブスの卵とはまさにこのこと。木をスライスして貼り合わせた合板を、型に入れて椅子などのカタチをつくったのがご存じ成形合板で、もう50年以上も前に誕生した技術。それなのに、木片を樹脂で板状に固めたOSB合板を見て、同じようにそれも型に入れて椅子にしようなんてことを、なぜ誰も思いつかなかったんだろう。
Jimmy ( photo : Alessandro Paderni ) |
そんな驚きももちろんあったけど、この椅子に注目したのは、僕が日頃考えている「エコロジーなコントラクトチェア」にまさにこういうものだ!と思ったこと。
「コントラクト」というのは平たく言うと「業務用」ってこと。コントラクトチェアとはつまり、飲食店とか、オフィスとか、公共施設とかで使用される椅子。家庭用の家具との大きな違いは、選ぶ人と所有する人と使う人が違うことと、現実を知ると哀しくなるくらい乱暴な扱いに耐えなければいけないこと、そして必然的に耐用年数も求められる使用年数も極端に短いこと。
トレンド、戦略、業績。椅子本来の機能やデザインとは次元の異なる要因で、次から次に使っては棄てられる椅子。それは避けられない宿命であり、「長く使ってもらえるように」という儚い願いが聞き入れられる余裕はない。
だとすれば、作るのにも棄てるのにも環境負荷が少なくなるような椅子を作ればいい。
「Jimmy」はもともとゴミにしかならなかった木片を固めたOSB合板と、100%リサイクル可能なスチールパイプでできた椅子。つまり「この椅子を作るため」に環境から新しく採取された材料がほとんど無い。棄てても、燃えるゴミとスチールに確実に分別できる。製造や破棄などの「活動」にいくらかエネルギーは費やしているけど、それ以外に環境に与える負荷がない。
たぶん、こういう椅子は一般家庭には入りにくいと思う。剥き出しのOSB合板の質感や、簡素な金属製の脚は工業的、機械的で、「やすらぎ」を求めるホームユースにはなじみにくいから。でも、だからこそ、この椅子はコントラクトユースなんだし、コントラクトメーカーが責任持って発信していかなければならないプロダクトだと思う。
そして、もしかしたら、かつてのフリッツハンセンやイームズの椅子がそうであったように、コントラクトユースとしての広がりから次第に市民権を獲得し、ホーム用としても広まっていくようになるかもしれない。
コントラクト家具メーカーのインハウスとしてできること。
時代を拓くデザインの、1つの小さな提案です。
検索したら1件だけ見つけました。見ると4年くらい前から、椅子用のシェルとかアームとか、「強くて軽くて曲面の求められる製品」に応用されるべきOSBモールドをつくっているらしい。製造は米国ミシガン州のストランドウッドモールディング社。技術はミシガン工科大学のライセンス。製造プロセス自体は通常の成型ベニヤとあまり変わらないように思うけど。
Jimmyもここの技術を使ったのか、あるいは独自の技術を開拓したのか。日本にもこんなのつくってるとこ無いのかなぁ。特許ライセンスの問題は引っかかるが、技術自体は提携工場でできるような・・・。
TRACKBACK URL:
http://www.k-en.net/blog3/mt-tb.cgi/4
COMMENT
POST A COMMENT