スクリーンに魂が溶け込んでいく感覚.近未来の姿として映し出された上海に放り出される一人の訪問者.あらゆる文化が押し寄せ混ざり合い,伝統も固有色も消え失せてしまった街.何一つ自分との繋がりを見つけることのできない世界において,彼はもう自分の存在を定義するための外部を認識できなくなり,彼のアイデンティティは静かに消滅する.
絶対的な浮遊感.その世界へ,極端に個人的な視点を追う無機質な色使いの映像と,コールドプレイによるイメージが定まらず立ち止まる事を許さない音楽が,僕を淡々と引きずり込んでいく.
人は,もとは1つだった魂の「半分の欠片」だけを持って生まれてくるという伝説にあるように,独りでは完全になることができず,だからその足りないものを満たしてくれる何かをいつも彷徨い求めている.きっと僕は,彼の魂と融合した僕の魂がずっと求めているものを,そこに見たんだと思う.それが何なのか,なぜそれに惹かれるのか,そんなことはわからない.理由も原因も必要ない.だからつまらない説明はしない.過去も,現在も,人はずっとずっと同じ問を考え続けてきた.未来もそれは変わらない.答えはそれぞれが自分のものを見つけていくものだから.
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2005年3月12日 11:54 | 返信
見ました。
ちょっと切なくて、ちょっと虚しくて、最後はやっぱり虚しくてって感じの映画でした。。(魂を求めてさまよっている、って感じかなぁ。。)
一番思ったのは、ヴェンダースの"Until the End of the World"に似てる、と。。流れる虚しい雰囲気と、近未来の雰囲気と。それから、当然“ベルリン・天使の詩”にもちょっと似てて、でも私は“パリ・テキサス”が一番好きなんですが。。(・・;) ロスト・イン~にもちょっと似てますね。
途中、なんだかどうしていいんだか身の置き所がなくなってしまって、ちょっと不安定な自分がいました。(う~ん、何言ってるのかわかりませんね~。。)
2005年3月12日 12:10 | 返信
思い出したっ!
もう一個似てるのがあった。(何度もごめんなさいね。。m(__)m)
“シェルタリング・スカイ”。
これも、さまよう魂を追い求める、という感じの映画でした。
2005年3月12日 13:51 | 返信
> う~ん、何言ってるのかわかりませんね~
いや,とんでもなくよくわかります.そういう作品ですから.
どれだけ作品にのめり込もうと思っても,結局彼らは心を開かないので,自分だけ置いてけぼりをくらってるような感覚になるんだと思います.孤独感,焦燥感.間違いなく何度も観たくなる映画ではありませんが,ときどき立ち戻りたくなる不思議な魅力があります.
思うに,「イノセンス」はこの路線を狙って失敗したんじゃないかと.
> “シェルタリング・スカイ”
スカイ繋がりでバニラスカイ...はちょっと違うか.
いろいろご紹介ありがとうございます.メモっときます.