道具から生まれる形 現代的な造形とはCAD造形?

2005.12.18  

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脚

 CADとは,Computer Aided Design(計算機援用設計)の名の通り,本来は製図だけでなく,プリント,スキャン,プロッティング,モデリング他,構造解析や物理シミュレーションから,資料作りとプレゼンテーションまで,コンピューターを使ったあらゆるデザイン手法を指す言葉でもあります.

 僕はパソコンと共に青春を過ごしてきたオタクくんなのでCADシステム全般に特に抵抗無く入っていけるんですが,コンピューターのことをよく知っているからこそ,CADの大きなデメリット,単純な入力機器と小さな出力モニターだけによる身体的リアリティの欠如したデザインの罠に陥るのを避けるため,極力その他の現実的造形ツールを使えるようになろうと志しています.

Yチェア/ハンスウェグナー 造形とは,そのツールによって思いの外大きな「制限」を受けるものです.スケッチでは2次元平面に縛られ,紙造形では2次曲面に縛られ,クレイでは薄物や細物が造れません.
 例えばウェグナーのYチェア家具蔵のVチェアの,一見複雑な3次元形状に見える後足(実は3軸回転させた単純な平面形状から出来ています).ロンドンのフォールディングチェアコンペに提出された,origami chairevolution.こういった造形をスケッチだけで生むことが出来るでしょうか?
 つまり,ある特定のツールにだけ頼っていると,必然的にデザインの幅が制限されてしまうということです.それはもちろんCADというデザインツールにも当てはまります.だから全てをCADに頼ることがないように,デッサン,ドローイング,レンダ,粘土にスタイロフォームなどの造形ツールにも積極的に挑戦してきました.

 ただ,いろいろ試してみて思ったことは,各ツールのメリットを活かした造形をするためには,そのツールの扱い方,素材の加工方法や専用工具の使い方などに習熟しなければならないということ.スケッチではパースを正確に描いたり絵から寸法を推測できなければならないし,スタイロフォームの切り方は決して木材のそれとは同じではなく精度が欲しければ専用の機械が必要になります.結局「デザイン技術の習熟」とは「デザインツールの習熟」と等価なのかもしれません.

 要するに,CADも同じように習熟が必要なのであって,ツールの性質上必然だと思っている制限の大部分が,実は今の自分にはその習熟が足りていないだけなのかもしれません.僕が一番習熟しているツールは間違いなくCADです.が,もちろんそれも駆け出しに過ぎず,まだまだ出来るはずの出来ないことが沢山あることを知っています.
 一週間粘土やスタイロフォームと格闘しても出来なかったモデルが,一日CADと格闘して今までできなかった曲面モデリングのコツも何となくわかってきて,この週末で5モデル出来たのは,僕にとってのCADのアドバンテージの証明ではないでしょうか.
 たとえCADに限界があって,いつも(気付かないうちに)その限界にぶち当たっていて,端から見たらいかにもCADっぽいデザインしか出来ないでいたとしても,それはそれで「自分らしいデザイン」になる可能性を秘めているように思います.

#ひょっとすると,今のデザイナーは世界中どこでも当たり前のようにCADでデザインするようになっているわけなので,今っぽいデザインというのは,つまり「CADっぽいデザイン」のことであって,逆説的に,CADでデザインすることが今っぽいデザインへの近道になってたりするのかも,と思いましたが短絡過ぎでしょうか.

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