普段あまり絡まない他部署の同僚さんに、
あるとき何気なく「かわいいシャツですね」と言われて、
少し嬉しくなった。
DRIES VAN NOTENのチェックシャツ。
かわいいですねと言われた赤ベースのマルチカラーチェックももちろんだけど、
そのハリのあるブロード生地や、
スッキリとしてるけど細すぎないストレートシルエット、
ちょっと長かった袖をカットして作ったジャストフィットのサイズ感。
どれをとっても文句なし。
だから、ずっと一番のお気に入りとして愛用してきた。
10年も前から!
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修理前のシャツ。襟も袖もボロボロ...。 よくこんな状態になるまで恥ずかしげもなく使ってたな(苦笑)。 |
いや、改めて過去の小遣い帳を引っ張り出してきてその事実に我ながらビックリしたんだけど、
そりゃさすがに10年も愛用してれば、
襟はすっかり黄ばんで漂白も効かなくなるし、
袖はすり切れきって台布が見えてきたり、ボロボロになって当たり前。
カジュアル用として袖を隠しながらコッソリ着たりしたけど、
さすがにビジネスにはムリだし、
いくら愛着があって捨てるにはもったいなくても、これじゃタンスの肥やしになるしかない。
そんなときに出会ったのが「修理して着る」っていう付き合い方。
お気に入りのシャツが、今度は流行のクレリックシャツとして復活。
新品を買うよりもずっと低コストで、上質な真新しいシャツが手に入るのも魅力の1つ♪
大げさにいえば、これはもうデザイナーの手を離れた、世界で1枚のオリジナルシャツ。
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high fashion 2007/08 Style and Personality of LE CORBUSIER |
シャツが修理して着れるものだって教えてくれたのは、
学生の頃から好きで読んでいたファッション誌「high fashion」。
偉大な建築家ル・コルビュジエにスポットを当てて現代モードの可能性を探る特集の、
コルビュジエと交友のあったジャンコクトーのシャツについて語られた、
下記の一節だった。
コクトーがパリ左岸、セーヴル通りの「アルニス」の常連客だったのは、よく知られている通り。コクトーは縞柄のシャツが好みで、その襟や袖がすっかり切れると再び店に来て、修理を依頼した。が、同じ縞柄がない場合、似たようなストライプ時のシャツ生地でつけ替えた。今、コクトーの写真をよく見ると、襟と見頃で微妙に異なっているのは、そのためだ。
面白いのは、同じシャツを修理して着続けるっていう「スタイル」があるってことを飛び越えて、
コクトーは、あえて無地の生地を当てずに、違う柄の生地でも構わずにつけたというところに
「モード」らしさがあるってこと。
普通の仕立屋さんで柄シャツに違う柄の生地を当ててくれって頼んだら、嫌がられそうな気がする。
もちろん無数にある柄シャツを、修理用に「少しだけ使う」ために在庫しておくのはもったいないし、
そもそも違う柄を組み合わせるなんて非常識すぎる。
あえてやったとしても、仕立屋さんは柄の組み合わせに保障ができない。
だからそれを実行するには、持ち主が責任を持たないといけない。
ユーザーが、デザイナーとなり、ディレクターになって服を創る瞬間。
そこからは、元々のデザイナーの意図は切り離されて、その服はユーザーの創作物になる。
そこが「モード」らしい。
同じものを、修理しながら長く愛用する。
と、最近よく聞かれるようになったのは、もちろん「エコ」の観点から。
だけど、どうせ修理して、オリジナルと違うものになるんだったら、
もっと自分らしい「アレンジ」ができたら楽しいのに。
修理というと、マイナスをできるだけゼロに戻すっていう消極的なイメージがあるけど、
マイナスを大きくプラスにするくらい、積極的なものであって欲しいと思う。
シャツの修理も、コクトーの通った仕立屋のように、
自由に色柄が選べるようになったらもっと面白いのになぁと思いながら......。
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芯まで削れたソールに革でパッチを当てて、その下にゴムソール。 言われなければ気づかない仕上がりに満足。占めて3,000円くらい。 ソールだけだったら2000円くらいなので、やっぱり早いに越したことはない。 |
「修理して使う」の王道と言えば、革靴。
コイツは大して高い靴じゃないのにソールが木製で、すぐにかかとが心材まで減って、
半端なところじゃ直せないかも、どこに相談したらいいものか......と思っていたところ、
なんばの靴修理専門店で「直せますよ!」と快く引き受けてくれて無事復活。
修理で最も重要で大変なのは、信頼できる修理屋さんを見つけることかもしれない。
ネットでなんでも見つかる時代だと言われているけど、まだまだ流動化しない情報がここにも......。
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