Google的視点で読み解く Twitter現象

2009.10.26  

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ヨハネスフェルメール『メールを書く婦人と召使い』
ヨハネスフェルメール『メールを書く婦人と召使い』
メールを書くのは文字が生まれて以来続けられてきた基礎的なコミュニケーション手段。

 ふと思い至ったのは、「ついったらー」の存在だ。Twitterがブームになって、例えば、勝間和世と広瀬香美が秋葉原でデートしながら居るところや見たものをリアルタイムでつぶやく、講演やセミナーで聞いてる人が発言内容をリアルタイムでつぶやく、「オフ会をドコソコで×時から始めるので適当に来て話しかけるかつぶやくかしてください」と呼びかけられて脚を運んで遠くからその様子をつぶやく。

 奇妙な光景だよな、と思う。みんなして下向いて必死になって携帯をカチャカチャいじってる訳だもん。一昔前なら、携帯をいじってる人はみんな「メールしてる」と言われていたけど、今は携帯いじっている人の内、何割がメールで、何割がTwitterなんだろう。けど、外からじゃそれはほとんど見分けがつかないけど、やってることは実は全然違う。

ついったらーは何をしているのか?

 そりゃ奇妙な光景だよ。
 だって、メールは個人的な通信で、相手はその人と知り合いの1人か、時々は何人か。相手がいるし、用件もある。「目の前の人に自分の用件を伝える」という、サルがヒトに進化して以来(いや、犬だってたぶんしてるけど)してきた古典的なコミュニケーションが、ちょっとその方法を変えただけ。その行為自体に何の不思議も謎もない。
 けど、Twitterに特定の相手はいない。文字通り不特定多数に送信されるそのデータは、用件じゃなくて「現在の状況」がほとんどだ。まるで空に向かって「僕はいまココにいるよー元気だよー」と言っているみたい。何か見えざる存在に向かって、今の世界の状態をみんなして報告してるみたい。
 一体彼らは何をやってんだ?

 というところで気づいた。

 ついったらーは、「現実の世界で起こっていること」をインデックス化してるってことに。

Googleを使っても見つけられないもの

Google Street View は、天井にカメラを載せた車を走らせて街の写真を地道に集めて作られている。逆に、そうやって地道に道路を走って「現在地」と「360度全方位の写真」を結びつけたデータが無いと、Street View で路上の写真を検索して表示することができない。「360度全方位の写真」だけが沢山あってもダメ。それが「現在地」と結びついて初めて「検索」が可能になる。

 この「検索を可能にするための情報」を「インデックス」と言い、インデックスを割り振って「検索を可能にする」ことを「インデックス化」と言う。

 Googleは「世界中の情報を整理する」ことを企業スローガンにしている。最初はウェブをインデックス化して効率よく整理して検索するだけの企業だったけど、今はニュース、画像、動画、書籍、地図、あるいはメール、買い物履歴、交友関係など個人情報までインデックス化して検索可能にしている。

 もう既に、Googleに検索できないものは無いんじゃないか? とさえ思う(Googleパーソナルの登録画面に「Googleを使っても見つけられないもの」の回答欄にどんなものが寄せられているのか統計資料を見てみたい)。けど、GoogleのCEOエリックシュミットは、現在Googleがインデックス化している世界の情報は全体の「2~3%」だと言う。

現実の世界をインデックス化する方法

 その残りの97~98%に含まれるもののうちの一部が、この現実の世界そのものだ。例えば、僕がある日谷町9丁目のカフェに行っても、立ち去れば僕の気配は消えて無くなる。何の記録にも残らない。例えば僕がそこで一緒にいた人にいろんなことをしゃべっても、その音波は発してすぐ空気の摩擦で減衰して消えて無くなる。僕とその人の記憶に思い出として残ったとしても、それを僕が後でGoogleで検索しようとしても出てこない

 いつ、だれが、どこで、何をした。どこで、何が起こった。
 誰かがわざわざウェブやブログやニュースにするほどの価値ある出来事だったら、それはインデックス化されて検索できる。けど、わざわざ記事にするほどでもない出来事はインデックス化される機会がないまま消えていた。今までは。

 それがTwitterによって、クラウドソーシング化された。
 わざわざブログやニュースにするまでもない些細なことだけど、世界中の何百万のユーザーのほんの少しの余った時間を使えば、何千万、何億という桁違いの情報が集まってくる。しかもほとんどリアルタイムに。世界中のいたるところで「今何が起きているか?」の記録が大量に取られている。現実の世界で起きていることが、「時間」と「人(発信者=目撃者)」と、一部には「場所」が付加されてインデックス化されている。

 それがきちんと整理できて、うまく検索できたら、何が見つかるだろう。少しでも人々の関心を集めた出来事なら、いつどこでだれがどんなことをしたのかが、後からかなり正確に調べることができる。例え情報が断片的でも、自分も当事者として体験していたなら、その自分の記憶をより鮮明に思い出すためのキーとしては十分だ。
 今でさえ、Twitterのログを検索すれば、僕が谷町9丁目のカフェにいたのが何日何時だったのか正確に知ることができる。確かに、そこで何をしゃべったのかまで知るには、今のTwitterでは情報不足か、記録ツールとしての効率や利便性に欠けているけど、それは将来改善されるはず。頭の中で思ったことをリアルタイムでテキストに変換してアップロードするくらいのSFみたいな技術がいるかもしれないけど。

 ただ、将来「Google Life」がローンチされたとき、それは、このTwitterによるライフログの集合と再編成という仕組みが応用されたものになっている可能性が高いんじゃないかと思う。

 そこで何が実現されるのか、何が可能になるのか、は今から考えといても損はない。

参考図書



CAFE GROVE

 その谷町9丁目のカフェ「CAFE GROVE」。10月18日 16:40頃。

 ていうか、いつの間にか、写真撮ってるし、ケータイでメールしてるし、手帳にメモまでしてるし!つぶやかなくても検索しなくても、日時は極めて正確に後追いできました。
 暇だな自分(笑)。

CAFE GROVE

 ちなみにここを教えてもらったのもTwitterつながりです。
 地方出身で日の浅い僕にも、大阪で助けてくれる知り合いがいっぱいできた。

 素晴らしいツールだと思う。今後ともヨロシク。

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