最新素材だからこそできるカタチ PLANKの新作 『MYTO』

2007.10.27  

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MYTO / Konstantin Grcic
MYTO / Konstantin Grcic

 先月くらいからチラチラと噂だけ先行していたけど、10月にデンマークで開かれた見本市で正式発表されたらしくWEBでも情報が流れるようになって、予想通りの度肝を抜く造形で話題をかっさらっているのが、このコンスタンティン・グルチッチの新作「MYTO」。メーカーは同デザイナー作「MIURA」も手がけているイタリアのPLANK
 座面に施された薄く細かいパンチング、エッジが効いたシャープな造形、カンチレバー。これがスチールやアルミでできていたら、いやー確かによく頑張った、さすがグルチッチだなーという感動は覚えたかもしれない。けどこれ、プラスチックなんですよ。もうぶっ飛びました。あり得ない。プラスティックでカンチレバーなんて聞いたことがない。あたまおかしいとしか思えない。

MYTO / Konstantin Grcic
MYTO / Konstantin Grcic

 もちろんそれはただのプラスチックじゃない。BASF(ビーエイエスエフと読む)という化学素材、プラスチックメーカーの提供するUltradur® High Speedという最新素材。「部分結晶性飽和ポリエステル樹脂」と呼ばれるその素材は、高剛性、高強度、耐候性、対薬品性に優れ、自動車部品などの耐力部品向けに開発されたもの。さらに、「~ High Speed」の意味するところは、プラスチック成型時の溶解液の流動性に優れ、通常のプラスチックのおよそ2倍のスピードで型の中に液をまわすことができること。だから細かくて薄い成形ができる。さらに型を薄くできれば材料も抑えられ、冷却時間も短縮され、生産性もアップする。
 カンチレバー、パンチング。そのどちらもが、グルチッチ自らが語るように「この素材でしか実現できなかったデザイン」。最新素材の特性を最大限に発揮して、だからそこ誰も見たこと無かったものを作ることができる。アイデアだけでもダメ。カタチだけでもダメ。技術だけでもダメ。その全てを殺すことなく活かしきり、生産性の高い製造プロセスまでも開発してしまう。これこそが本当に、次の時代を切り開く、最新デザインの手法だと思う。


 とは言っても、ウチは何を差し置いても「業務用椅子メーカー」であることに変わりはなく、いかに安く大量に丈夫な椅子を作るかが最も重要なことだったりする(牛丼屋か?!)時点で、最新素材でだれも見たことのないものを作ろう!というベクトルはちょっと間違ってるとは思う。むしろ、誰も実現できなかったレベルで丈夫な椅子を安く大量につくれるような最新素材を探すのが、会社的にも、インハウスデザイナーの義務としても、一人のデザイナーの仕事としても、個人的な興味としても正しい姿勢だと信じて、こっそり狙ってます。

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