2007.09.16  

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竹屋株式会社(三重県) 3連プリン

 「モンドセレクション」って知ってるよね? ほら、プレミアムモルツのCMでばんばん流してるからさ、名前くらいは聞いたことあるだろ? 僕としても認識に大差は無いんだけどさ。言葉のイメージからすれば、カンヌ映画祭の金熊賞くらい無数のライバルの中から厳選された一級品に与えられる名誉ある称号だと思ってたんだよね。だからもう、スーパーの特売品で69円だったノーブランド的3連プリンからその単語が出てきたときには、自分の目を疑ったね。いや、ほんとの話。(春樹ライ麦風)

竹屋株式会社(三重県) 3連プリン
竹屋株式会社(三重県) 3連プリン

 というわけで調べてみました。
 「モンドセレクション」は、審査料を払ってエントリーされた食品を対象に、衛生、味覚、包装、原材料等を審査して、特別金(最高金賞)、金、銀、銅とランク付けする認定機関みたいなもので、よく「食品界のオリンピック」みたいに形容されてるみたいだけどイメージ的には間違いで、むしろ「グッドデザイン賞」が近いんじゃないかと思う。合格者数に制限のない資格試験とか。ちなみに審査料は20万円くらい。
 もちろん金払えば獲れるってもんでも無いらしく、金賞以上、しかもそれを3年連続で獲ったときに授与される国際優秀品質賞は至難の業だとか。3年連続で最高金賞を獲得したプレミアムモルツが自慢したくなる気持も肯けます。

 そんな国際的な品質審査に、決して小さいとは言わないがいわば巨大な町工場みたいな会社が、しかも普通にスーパーに並べられても他の大手メーカー品と見かけに変わらないどころかブランド力からすれば明らかに負けている、高級とも高品質とも縁の無さそうな庶民のデザートで挑戦し、しかも何気に金賞を獲っちゃってるのが面白い。

 例えば既に明治や森永などの大手メーカーが、安くておいしくて信頼のある商品で幅を利かせているスーパーのデザートコーナーに、会社規模では全然敵わない自社の商品を並べてもらおうと思ったらどうするか。方法は大きく2つあって、1つは大手メーカーの量産手法では流通させられない高級路線を狙うこと、もう1つはとにかく価格を安くすること。
 明治や森永だったら特売でも100円を切ることは無いことから考えても、竹屋はもちろん後者を選択した。普通だったらそこで、安かろう悪かろうになってしまうところなのに、品質への追求は譲らずに、それを「自称」ではなく、きちんと外部機関に認証してもらう姿勢がとにかく偉い。それも2000年の当時には今ほど名の通っていなかった(宣伝効果としては薄かった)国際審査に、自ら調査、対応していく苦労も顧みず。
 そして何より、がんばって価格を抑えながら品質を守って獲得した「モンドセレクション」を、パッケージで謳わない。安さ(だけ)に惹かれて買ってきて食べる時になって初めて気付くところに印字する小粋さ。

 全部狙ってやってるのか、それとも単に馬鹿正直なだけかはわからない。わからないけど、もしかしたら、これは「ブランディング」の本来あるべき正しい姿なんじゃないかと思います。ブランドの基礎になるべき理念が何もないのにイメージだけ高めようと「自称」広告だけやたら格好良く謳う中身のない「ブランディング」に腐心する企業は、この竹屋さんの姿勢をまず見習うべきだ。

 なんて偉そうなことを、会社帰りの深夜に、夜食代わりにパク付きながら考えたりしていました。


 ちなみに今年はあの不二家さんも何点か金賞を獲得しています(プレスPDF)。「信頼回復の一環として18年ぶりに出品した」らしいけど、それって前年に出してたら獲れたのかどうかはちょっと気になります。(ホームパイ(金賞)は大好物なので出荷停止騒ぎになったときからもずっと陰ながら応援していますよ!)

 当たり前のように品質が守られてると消費者も経営者も信じ切っているから外部審査(等の品質向上への積極的努力の表明)をサボっている「ブランド」と、おいしさも品質も全く信用無いからこそ自らムチ打って世界基準の品質をこっそり獲得している「ノーブランド」と、消費者としてはどちらを選ぶべきだとも思いますか?

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