現代日本のデザイン会の指導者原研哉の,日経新聞に連載していたエッセイを集めた一冊.1回分の分量も少なく,休み時間にちょこちょこ読んでいてもすぐに読み終えてしまう程の読みやすさだけど,やっぱり目の付け所が秀でてて,それでいて時々おちゃらけたりする文章をさらりと書いてのけるあたりが良いなーと思いつつ,結局デザインは生活を豊かで楽しくするための行為であり,デザイナーとして思うこと,心がけていることは,一般生活者すべてにとってその生活の向上のために心がけていくべきことなのかもしれません.
エレガントというものは懸命に努力して最高に良い状態を目指してもそこには決して生まれてこない.むしろ自分の美点や長所を知り抜いた上であえてそれを抑制するか,あるいはちょっぴり破たんを加えてやるくらいの姿勢から生まれてくるのである.
優位を自覚した後にそれを誇示せず,むしろ上手にそれを隠す.そういう状況の周辺にエレガントはふっと発生する.(P.16 「エレガントなハエ」より)
考えてもみれば至極当たり前のことなんですけど,改めてこうして言葉にしてもらって,それが自分の意識の中にあるかどうか自問すると,やはり見事にすっぽ抜けてます.中途半端な努力での中途半端な成果を懸命に誇示する愚かしさ.もちろん,実力の伴わないうちはあえて愚かであることを自覚しつつも誇示していかなければならない局面もあるだろうけど,でも目指すべき極地はゆとりあるエレガントな人生であることを心がけていたいものです.
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