2006.01.20  

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谷進一郎 李朝文机

谷進一郎 前回に引き続き,特別講義2回目のゲストは,長野県小諸で木工に従事する工芸家谷進一郎先生です.国展に所属し手がけられている神々しいまでに正統派な工芸作品を見たことはあったので身構えてしまいましたが,思いの外小柄(な印象)で,時折見せる笑顔が優しい人でした.まったく,権威に弱い自分の性分を疎ましく思います.

 正直言うと,僕は今まで工芸作品に全然興味がありませんでした.本来は日常に使うはずだった「もの」が,その目的を忘れ,職人の技や美意識を見せるためだけの「使えないもの」になってしまっていると.
 けど,谷先生の文机を前にして,それに目を奪われている自分に気がつきました.造形はとてもシンプルで技巧的に面白いカタチはしていません.天板も漆に際立たされた木目がある以外は,平坦なだけで何の変哲もありません.が,その木目が美しい.キズひとつ無い,ヘコみも歪みも塗りむらもない完璧としか言い様のないサーフィス.いまだ機械にすらなしえない,人の技術の可能性がそこに見えてきます.

 木はそれだけで美しい.木そのものが美しい表情を持っているので,手の込んだものよりシンプルなもののほうが,それを活かすことができる.作ったものが後世まで残るものになるのか,ゴミになってしまうのか.せめて育ってきた年数分くらいは使える家具に作ってあげないと木に申し訳ない.

 ありかもしれない.自分の部屋には置けないけど,でも置きたくなる気持ちは確かに理解できました.フェラーリとかポルシェは無理だけど,この文机だったら買って買えんこともない(現に貯蓄をはたけば今でも買えます).でも売れる売れない以前に,難しいのはきっとその良さをわかってもらうことなのかもしれません.

 自分のものづくりのセンスに共鳴してくれる人に出会う確率は低い.でも100人1000人に見てもらえば1人くらいは注文してくれるかもしれない.量産できないので値段はどうしても高くなってしまうが,それを上回る魅力みたいなものがあれば,人を惹き付けることができる.

 でもまずは,ディテールを徹底的に作りこむ高い技術力を.


neon / au design project

 CASE STUDYで知った,深澤直人の新しい携帯.携帯? これが?!
 う~ん.以前から得意としていた隠しLEDインジケーターの当然の帰結.「もう何も引けないから誰もかなわない」.そこまで引かなくて良いから!欲しいけど!

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