2005.07.01  

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3.模型によるスタディ

 深澤直人のイスの前足は一見すると一様な太さに見えますが,実際には上よりも下を2mm程細くしてあるそうです.つまり,平面的な図面や数値だけで決めたかたちと,現物を人の目で見たときの印象は,微妙に,時に大きく違ってきます.とすれば,立体物のデザインアプローチとしては当然,図面やスケッチなどの平面的なものではなく,現物と同じ3次元的なものでかたちを整え,それを図面に落とし込むという順序にならなければいけません.

模型によるスタディ

 まず,両サイドの「足」のかたちを決めるため,理想寸法,平面的に最適と思われた寸法で模型を作ります.が,それだと奥行きが90cmを超えてしまうため,どこまで奥行きを削ってもフォルムのバランスが崩れないかを詰めていきます.また足を垂直に立てるのではなく少し傾斜を持たせる場合,見た目と強度はどちらが良いかを検討します.さらに角のRの大きさなどを数値ではなく見た目で良いと感じるラインを探します.
 これら一連の作業は,組み上げた模型に直接鉛筆でラインを書き込み,カッターで切り取りながらかたちを作っていきます.それはさながら,3次元デッサンとでも言うべき作業です.特に(強度や快適性にほとんど関わらない)座面形状等は,こうした手法が本領を発揮するところです.

4.図面というツール

図面

 およそこの構造で上手くいきそうだという方向性が定まったところで,寸法の再検討に移ります.まずはこのままでは奥行き90cm超という異常なサイズを,自分サイズを諦めて一般サイズにシフトすることでクリア.そして,模型で得られた足の形状を,模型から測定し図面に落とし込みます.
 問題は,この足は,上に向かって,前に向かって少しだけ角度がついている(座ろうとするその入り口が一番大きくウェルカムなかたちになってる)ことです.その形状を保つのはもちろん座面に設けられた切り込み.これをどのくらいの長さ,角度で切り込んだらいいかを,簡単な三面図を描いて,それぞれの図の相関関係から割り出していきます.

5.模型による最終確認と原寸モデルの製作

最終モデル  以上より,最終的に右のようなかたちになりました.
 奥の初期モデルもスタイル的には確かに格好いいけど,手前の最終モデルでは「椅子らしさ」がよりでてきていると思います.つまり,それだけ普遍的な座り心地を追求する椅子デザインとしての完成度が高まったとも言えるんではないでしょうか.特に意識した訳でもないけど何となくイームズの椅子に似てきてしまった座面も含め,個人的にはとても気に召すデザインができたと自負してます.

 本来はここから原寸モデルを製作し,実際のすわり心地,強度などを再検討しなければいけないんですが,この単元ではこれまで.120kgの巨漢が乗っても壊れなかったし,試しに座ったほとんどの人から「すわり心地が良い!」という声を頂いたので,大きな改良無く量産モデルに移行できそうです.


 と言う訳で,続きは,いやいや「製品の詳細」はプロダクトページでご覧ください.

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