2004.11.17  

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『アドルフの画集』(2002年アメリカ)

 1918年ドイツ.画家を目指して万進していた貧しい一人の男が,あるいはその小さな才能を小さく開花させてしがない画家として人生を静かに終えた可能性もあったのに,何が彼を史上最悪の破滅の使者へと導いていったのか.その皮肉な運命の一端を,彼をサポートしていた画商マックス・ロスマンとの友情をからめて描いた作品.

 第2次世界大戦というカタストロフに突き進んでいく序章が垣間見えます.前大戦での多額の賠償金で経済的に,ベルサイユ条約による国土の割譲で精神的に打撃を受け,国中を覆い尽くしていたやりきれなさと不安に満ちた空気.ここからわかることは,第2次世界大戦が起こるずっとずっと前から,恐らく1次大戦よりももっと前から,世界は既に狂っていたということです.政治的手段として戦争が当たり前だったこと.敗戦による打撃はリベンジによって奪回するしかなかったこと.戦争による不安や恐怖がさらなる戦争への加速剤になっていたこと.
 だから,今の社会は,テロだブッシュだイラクだと言われていても,当時のそれと比較すれば文字通り天国と地獄くらいの差で「平和」だという事です.世界規模の大戦なんて起こりえないと思います.そこには,第2次世界大戦後に世界各地で費やされた「繰返さない」ための甚大な努力が存在する訳で,我々の世代はそれをしっかりと守っていかねばならないと言うことです.

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