40~50年代に一世を風靡したアメリカの代表的抽象画家ジャクソンポロックの半生を描いた映画.
画家の生涯を理解するにはその作品を見るのが最良にして唯一の方法と信じてはいるけど,ポロックが乗り移ったとしか思えないエドハリスの演技の域を遙かに超えた見事なポロックぶりからも伺える,現実に存在した「天才」を映画として描くことの難しさを総力を挙げて乗り越えて作品として結実させているという事実もまた,一見の価値があることに疑いの余地はありません.
ポロックの作品で重要なポイントは2つあり,1つは,見た目とは裏腹にそこには偶然の要素が一切用いられていないこと.この絵がチンパンジーには描けないことは,荒々しいタッチによって形成された絶妙な色彩バランス等に気を配ってみればすぐ理解できるはず.そしてもう1つは,そこにはモチーフとしたものが何もないこと.つまり,ポロックは,画用紙とクレヨンを与えられた子供と同じように,白いキャンバスと絵の具を手にしたその瞬間の情熱,衝動をそのまま本能的に解放して作品に結実させていると言うこと.
僕は常日頃から,ここまでは行かなくとも例えば水彩画や書などの確信的で最低限のタッチで作品を完成させる芸術手法にとてつもなく大きな憧れを抱いているんですが,逆に僕が「創作」の名の下に行うデッサンやあるいはスピーカーデザイン&製作というのは,現実世界の目の前に存在するモチーフあるいはコンマミリ単位の図面という「究極のイデア」に向かって,少しずつ修正しながら限界まで近づいていくことが目的であるわけで,つまり要求されている才能が全く違うと言うことに今更気づきました.
えぇ,僕はどうあがいても理系人間です.
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