2004.10.21  

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『みなさん,さようなら』(2003年カナダ・フランス)

 末期ガンで死に向かう歴史教師として冴えない人生を送ってきた父親と,彼に逆らうようにして数学や経済を学びビジネスマンとして成功した人生を送っている息子.すっかり仲違いしていた親子が「最期の時間」を共に過ごすことで,本当はお互い愛していることを確認し合うことができたという幸せ.最期の時を仲の良い友人に囲まれ,豊かな自然の中で安らかに迎えられる幸せ.結局何一つ成し遂げられなかったが,最期には家族への愛を確認し,それに満足した上で死を決断できた幸せ.本人が気づかないところでも,若い世代に少なからぬ影響を与えることでその死に意味が与えられた幸せ.

 人生というのは,壁に開けられた穴のように自分の肉体を通してこの世界を覗き見るというほんの一瞬の「イベント」であり,それがどのように始まり,過ごし,終わろうとも,その一瞬で見たものすべてが彼にとっての唯一絶対の価値を持ち,それこそが彼が生きた証となってこの宇宙に永遠に存在し続けます.
 「死」は怖れるに値しないということです.

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