TRINO

TRINO (2006)

PRODUCE | ART DIRECTION | DESIGN | DIRECTION | PRODUCTION

CATEGORY
FURNITURE
SIZE
330W 290D 420H
MATERIAL
SCRAP WOOD (PU) / ASH (URUSHI)

廃材を利用した 超軽量木製スツール

2006.03.15   はてなブックマーク - TRINO


廃棄された素材の価値の再生

端材から生まれる固有パターン 木はエコ素材と言われます.確かに限りある石油や鉱石資源と違い,それは太陽と水だけで生産され続ける無限の素材です.が,それは何百年という,人の営みと比べてあまりにも遅すぎる木の生長時間スケールで見たときの話.木材も限りある資源であることには変わりありません.

 木でものづくりをする.木を学ぶ.だからこそ考えられる問題があるのではないか,だからこそ伝えられるメッセージがあるのではないか.そう考えていく中でまず目に留まったのが,工房脇に日々棄てられ続ける端材達.そのままではゴミになるしかなかった端材は,しかし使い方次第ではこんなにも美しく面白い表情を見せてくれます.無垢ではない,寄せ木でもなければ集成材でもない.それは端材を手作業で組み合わせるからこそ作ることのできる,他の手法では得られない,新しい素材の発見でした.

必然から生まれた構造美

構造図面 折角ゴミから再生されたリサイクル素材を使っても,またゴミとなるようなものを作っては意味がない.長く愛用されるものを作ってこそその労力が報われます.
 美しさとは何か.僕がこのスツールに見出した美は「繊細さ,儚さ」でした.倉俣史郎のグラスチェアのような,手荒に扱うことを許さない儚さが,ものに接するときの緊張感を高め,姿勢を正すことを強要する.それは普段使いするものから一段高いところに鎮座すべき特別な存在感を放ちます.

トラス構造体 細く儚い木のスツールを作るとなると,必然的にその構造に厳しい制約が科せられます.力学的に強固なトラス構造を多用し,木材の荷重特性を理解して圧縮伸張荷重に対する材の形状を工夫し,荷重を分散するだけでなく材を破壊する荷重を極力相殺して逆に使えば使うほど強固になっていくような木組み構造を考えなければなりません.
 こうしたことを踏まえつつ,実寸モデルによる検証や生産性を視野に入れた調整を繰り返した結果に自然と生まれたのが,このトラス構造体です.

「シンプルで美しい」ことの大切さ

 でも結局は,僕が作りたかったのは「ふつうのスツール」でした.結果的に生まれた新しい素材も,複雑な構造も,あるいはそこで培われた機械加工のノウハウも手加工による感覚的バランスも,すべてはスツールという製品にとっては単なるおまけでしかありません.

 ダイニングでテーブルを囲んで使うよりも,何もないところで(あるいはたき火やストーブでも囲みながら)何となく人が集まるシーンに持ち寄って使って欲しい.あえて小さく低めに設計された,軽くて持ち運びやすく数脚のスタッキングも難なくこなすシンプルなスツールにこめられたそんな願いが,いつの日か叶えられる日を夢見て.

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