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「吸い付き桟」とは,テーブル天板の裏に蟻型の溝を突き,1面を同形状に加工した角材をスライドして押し込んで,接着剤無しで取り付ける加工のこと.要するにテーブル天板にゲタの歯みたいなのを取り付けます.これはもちろんテーブル天板の反りを防止することが大きな目的ですが,同時に脚部を接続するための構造にすることで,それだけでテーブルに必要な機能を満たし,また特別な金具も必要なく見た目にスッキリしていることからも,伝統的に好まれる工法であることにはとても共感が持てます.
このテーブルは,偏にその「吸い付き桟」の長所を大フィーチャーしたテーブルで,吸い付き桟に対する僕なりの解答でもあります.製作者から見て,無垢材テーブル製作のために吸い付き桟は必要十分条件であること.使う人からみて,テーブルは天板と脚が最低必要条件であること.それ以外の要件を全部取っ払って,本当に必要最小限の,テーブルの原型を目指す.そうして浮かび上がってきた当たり前のカタチに,最後に僕なりのデザインエッセンスを加えてみる.
そう,僕はその最後のところが一番大切だと思います.僕はいわゆる「無垢材のテーブル」が作りたかった訳じゃありません.無垢材の,無垢テーブルの機能的特性を活かすこと,無垢テーブルを作るための当たり前の工程を省略しないこと,その上で,現在の自分のライフスタイルにマッチしたシンプルでミニマムで,でもほんの少し笑みがこぼれるような暖かな表情を湛えること.そうした趣向から,見た目に薄く大きく角を丸くしたテーブルと,実使用アングルからは垂直に見えるけど垂直よりは安定して見えるわずかに傾斜した,(ベンチや踏み台ではなく)ローテーブルとして最低限の荷重を支える細く丸い脚,カーペットの上で安定する点接地の球面脚先等のディテールが生まれました.
必要最小限の機能を満たすために,伝統手法にさらにオリジナリティを織り込んだ構造が必然的に導き出される.何てことはない,意識したわけではないのに,気づいたらTRINOスツールと同じプロセスを辿り,同じゴールにたどり着いていました.こうして生まれてくる作品が全て自分らしい作品になるのかはまだわからないけど,今回もまたとても自分らしい作品になったなぁとは自分でも思います.
ちなみに名前は,小さくて薄くて四角いもの(かわいくておいしそうなもの)→ビスケット(ロータスキャラメリゼ)→ビスコ(グリコのあれ)というイージーな連想から.あまりにも見事にはまるから結局抜け出せませんでした.
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