東京で一番見たかったのは,実はこれだったかもしれません.
オランダのPiet Hein Eek(ピート・ヘイン・イーク)が手がけるスクラップウッドファニチャー.その名の通り,様々な場所や用途で使われていた家具などの木製品を,一度完全にばらして板にして,でもその外装の表情を残したまま新しい家具として生まれ変わらせた商品です.
最初に断っておきますが,造りは最悪です.加工技術は低いし,精度が甘くてガタガタだし,それでいて軽い材なのでますます安定感はなく,あらゆる引出や戸棚が何のために使うべきか皆目見当がつかない闇雲なサイズ,位置に設定されています.
が,それなのに,そんなことくらいさておいちゃえるくらい,このシリーズは魅力的です.
古材(こざい)の魅力は確かにあります.新しい材料との大きな違いは,そこにかつて人が使っていたという記憶の断片が刻まれていることです.それは決して具体的なものでなくても良いし,裏付けが必要なものでもない.ただ感じること.あるいは自分の中の遠い記憶(遺伝子に刻まれた記憶とか前世の記憶とか言う人もいますが,そこまで飛躍するつもりもなく)を呼び起こすトリガーになること.
同じ魅力が,アンティークにあります.が,アンティークにない魅力は,これらは未だ誰も見たことがない「新しいもの」だということです.環境保全だ資源節約だリサイクルだという考えを推し進めると,結局「今あるもので十分だ.新しいものを作る必要はない!」と結論づけられます.それはそれでかなり正しいと思うところもありますが,クリエイターとしてはやはりそれでは面白味がありません.
環境に大きな負荷を与えずに,既存のものを利用して,既存のものよりももっと魅力あるものを創ること.そんな当たり前の,今目指すべきデザインをさりげなく具現化しているところが,Piet Hein Eek作品の魅力の1つではないでしょうか.
入学したばかりの頃は,ゴミ捨て場に大量にうち捨てられている木っ端(普通に10~20cmくらいの大きさ.都会では数百円から数千円の値が付きます)を,目を輝かせて拾い集めたりしましたが,最近,機械を使用できるようになり,実際に自分で数メートルの厚板を買ってきてそれなりの大きさの家具を作るようになってくると,なるべく保管したりゴミ捨て場を未だ漁ったりはするものの,確かにまだまだ何かに使えそうなサイズの木っ端でも,ついついゴミ箱に放り投げてしまうことも多々あります.
その大きな原因は,当初先輩からも伺いましたが,細かい割れなどの欠陥があったり,機械を通すには小さすぎたりして,機械木工家具用材としては使えないからです.手加工なら,雑貨なら使える材料でも,労働対価に見合わなかったり,そうして消費する量では追いつかないほどの木っ端が発生しているのが現状です.
何とかこれらの材料を,家具用材として再利用する,それもPiet Hein Eekのように驚きと感動の美しさを伴う家具としてよみがえらせる方法は無いものか.それはひとつのテーマとして,今暖めているところです.
2006.3.15 TRINO - SCRAP WOOD STOOL
初霜を観測した高山から寒々しい映像をお送りします.
と,喜び勇んで地面にはいつくばってこんな写真を撮っていたらあっという間に体の芯まで冷えてしまう罠.
けど,青森以北ではもう雪降ってるんですよね.全く,ここより寒いなんて想像を絶する阿鼻叫喚の地獄絵図じゃないですか.
昨日からもう既に,ストーブが十分効かないことに,とにかくびっくりです.誰か助けて.
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